自分で妄想を作ったら精神病ということになりますが、他人から妄想(悪意)を投げかけられても、精神病になり得ます。そういった意味で、マウントやパワハラは 相手に妄想(悪意)を投げかけられたと同じ意味です。もちろんこの場合、妄想(悪意)を投げてくる方が悪いのですが、妄想(悪意)に引っ掛かってしまう自分にも問題があります。割合はともかく100%相手だけが悪いというのは、まずないです。少し例を挙げて考えてみましょう。
妄想とは、”自分や他人を傷つける考えや行動” のことを言います。現実かどうかで判断するのではありません。妄想の例として、憎しみや嫉妬、嘲笑、いじめ、不平、不満、他責、自責、自己卑下、希死念慮などがあります。
詳しくは 妄想について どのように妄想に陥ってしまうのか? をご参照ください。
マウントを取られた時
たとえば、「うわあー、可哀想だね。そんなみすぼらしい服しか着れないなんて。貧乏だねー」“クックックッ“と蔑まされ、落ち込んでしまった場合、どのように考えますか?
相手は、お金があるかどうかを幸せの判断基準とし、見下しにきている状況です。ここで落ち込むということは、知らず知らずのうちに自分も お金があるかどうかを幸せの判断基準にしてしまっているということです。この場合の対処法は、幸せの判断基準をお金に置かないことです。そして「お前は、幸せかどうかを、お金があるかどうかで判断しているんだな」と心の中で呟き、相手の目をじっと見返せば、たぶん言わなくなるでしょう。
この話の続きで今度は、「君は不幸そうだねー」 “アッハッハッー“とバカにされて落ち込んだとしたら、どう考えますか? 精神病を患っていると、不幸そうに見えるんでしょうか。今回の相手は、幸不幸の判断基準を示していません。
これは、なんであなたは自分のことを不幸と思っているのですか?ということです。あなたが勝手に自分のことを不幸と思っているだけで、幸せか不幸かはあなたが決めていいのです。少なくとも自分で不幸と認定しなければ不幸ではありません。
もう一つ、マウントを取られた時、落ち込む例を紹介します。
「あいつ仕事ができない奴だな!」と既に自分が他人を見下していた場合、自分より仕事のできる人にマウントを取られると落ち込みやすくなります。仕事ができる・できないを幸不幸のラインに、既に自分で設定してしまっているので、ここでマウントを取られると落ち込みやすくなります。
この場合、見下した人にごめんなさいと謝罪し、もう決して他人を見下さないと誓ってから、ようやくこの(被害)妄想から解放されていきます。実際に謝罪するというより、心の中でしっかり反省することが大切です。自分の心には嘘はつけませんから。
パワハラを受けた時
パワハラを受けて、精神病になるのはよくある話で、そういった患者さんも多く来院されます。
相手側がパワハラという妄想(悪意)を押し付けてくるのが一番の問題ではありますが、こちら側にも、被害妄想や 何らかの依存、固執しているプライド など ないかを点検する必要があります。もちろんこれらは弱点になるので相手に言う必要はありません。
まず、相手が本当にパワハラという妄想(悪意)を押し付けてきているのか 見極めが必要ですが、これは相手が正しいことを言っているかどうかで判断するのではありません。その言動の背後にある相手側の気持ちを見抜くことが大切です。正しいことに妄想(悪意)を載せて、投げつけてくるのは常套手段ですから。正しいことを言っていても、妄想(悪意)が載っかっていれば、それは十分にパワハラです。
参考記事:妄想について
バカにして言ってくるのか?優しさから怒ってくれているのか?、こちらを見下して言っているのか?こちらにリスペクトを持って言ってくれているのか?、相手の気持ち・動機をよく見極める必要があります。しかしながら、こちらにも被害妄想があると判断はなかなか難しくなります。
判断の方法として、信頼できる人に相談してみるのは一つの方法です。相談する時は感情的になりすぎないように気をつけてください。他人に真剣に話を聞いてもらうには、感情をまじえる必要もあるでしょうが、感情的になりすぎると逆にこちらの方がおかしく見えることもあるので、バランスが必要です。焦らずに、相談してみてください。
もう一つの方法は、相手側の言動を一度拒否してみることです。もし相手側に妄想(悪意)があるとしたら、拒否された場合、怒りや落ち込みなどの反応が強く出るでしょう。拒否された時の反応を見て、相手が妄想かどうか判断します。そこで大きく怒鳴られるようなら妄想ですし、誰の目から見ても、パワハラというのが分かりやすくなります。
参考記事:うつ病 原因はいろいろ うつ病 診断 症状
相手側の妄想の割合が大きいと判断したら、次どう対処するかですが、理想は大所高所から相手を導いてあげることです。しかしそうできないから、精神病になっているわけなので、一旦は(被害)妄想に巻き込まれるのは仕方ないかもしれません。
まずは精神病治療の観点から、どういうのが決着の形かと申しますと、
①パワハラがきっかけとなって転職先を探したら、いい職場が見つかり、パワハラ自体を許せるようになった、②いろいろ話し合ったら、お互い認めることができて、協力して仕事ができるようになった。③会社に相談したら、別の部署に移動させてくれて、会社に感謝している などです。
別に転職になろうが、仲直りしようが、異動になろうがどれでもいいのですが、最終的に 許し、協調、感謝などの人間関係性になるのが治療目標です。少なくともそういった方向に行けるという希望が持てる状態で動いた方がいいです。
反対に不平、不満、恨みなどの人間関係性のままであれば、どの選択肢でも不正解となります。”転職などの大きな決断は、精神病が落ち着いてからした方がいい” と言われていますが、これがその理由です。
また、悩み抜いた後の判断は、思考でなく感覚で行うのがいいと思います。穏やかな感覚で決めたことを優先させるといいでしょう。パワハラや転職のことも忘れて遊んでいる時に、フッとこうしようかなと出てきた答えを採用するみたいな感じです。
長くなりましたので、続きは次回に。
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