(躁)うつ病・統合失調症の家族の接し方②:自立支援

お父さんのイラスト 治療

はじめに

患者さんの状況や家族環境によって、対応はさまざまであって、1人の患者さんにとって良かった対応が、別の患者さんにとって良いとは限りません。踏み込んだ対応が裏目に出る場合もありますので、私も無難なアドバイスしかできないと思います。

良くも悪くも一番責任を取ることになるのが本人、その次は家族で第三者は責任を取れません。他人の意見を参考にするのは悪くありませんが、あくまでも責任のない立場からの意見と考えて、最後は自己責任との覚悟を持って、判断・行動してください。

ここでは強制入院とまではいかない、家庭と対話できる状態の患者さんを想定してます。妄想に支配され聞く耳を全く持たない、取りつく島がない状態だと、強制入院しかないと思います。

もし自分が家族の立場だったら

医者は、医者の立場からいろいろ説明してくれると思いますが、本音を聞きたい時は、「先生が私の立場だったらどうしますか?」と質問してみるのが有効です。そこで私も、患者の家族だったらどうするかと考えて、お話したいと思いますが、その立場になったら本当にこの通りできるのかは分かりません。一応、子供が精神病になって家に引きこもってしまったという設定でお話します。

家族として大切なのは“期待のリセット”

今まで子育てしていく中で、こんな風に育ってもらいたい。こういう教育をしたい、こんな仕事に就いてもらいたいなどいろいろな期待があったと思いますが、一度ゼロにリセットします。その上で既存の社会通念とは比べず、この子なりの価値観で幸せな人生を送れるように一緒に模索します。期待のリセットと言いましたが、これは期待を投げ捨てるということではなく、今までの期待はしないけれども、無理だとも判断しないという意味です。結果として予定通りいく時もあれば、いかない時もあります。

とは言え、患者さんはいろんな人と出会い、失敗も含め、さまざまな経験をする必要があります。初めはよちよち歩きでいいのですが、少しずつ人と交流する、社会に出てもらう方向で考えます。

患者との距離感:誘い方

患者さんが心から理解できるのは、目の前にいるあなたの、あなたを主語にした「こう考える」、「これをしたい」といった本心だけ というのを前回の記事で説明しました。それを踏まえて、どのように患者さんを誘うかですが、家族が本当にやりたいと思っていることを、一緒にやろうと誘うのがいいと思います。

誘い方がどんな感じかというと、子供の頃に経験した友達を遊びに誘うような感覚です。「◯◯ちゃん、あそぼ。」みたいな精神です。これは主語が明示されていませんが、言った人が主語で、その人の本心がストレートに伝わると思います。これくらいの距離感で、一緒に行動したいという気持ちが伝わればいいと思います。もしかしたら、大人よりも子供達や動物の方が誘い方が上手かもしれません。

「一緒に散歩しよう」「一緒にごはん食べよう」「一緒にゲームしよう」、「一緒に料理作ろう」「一緒に旅行しよう」、「おしゃべりしよう」、治療のためではなく自分がやりたいから一緒にやろういう感じです。患者さんにやってみるかどうかを聞く必要はありません。

逆に、心配が先走り、治療のためとかという感じで誘うと、患者さんにとっては、過保護とか過干渉に感じ、息苦しくなってしまうと思います。

この辺りの ほど良い距離感で誘おうとすると、患者さんへの働きかけが少なくなってしまうかもしれません。1人の人が持っている引き出しも限りがありますので、できるだけ多くの人が関われるのが望ましいです。

行動を共にしたときの注意点

患者さんは失敗も含め、さまざまな経験をする必要がありますので、患者さんがやろうとしている時は、失敗が見えていても止めずにいろいろやらせた方がいいです。しっかり自分で考えて判断し、実際に行動して、結果の責任を負う、これが大事です。患者さんの思考はゆっくりなので、先に答えを言って、患者さんの思考・経験の機会を奪わないようにしてください。そしてやってみて、世間に笑われたり、非難されたりした時は、患者さんの横で一緒に笑われる、非難されるのがいいと思います。バカをやっても一緒に笑われてくれる人がいると心強く、次のチャレンジに繋がると思います。(さすがに犯罪的な行為は、止めて下さい。)

社会との接点をつくる(就労支援・グループホームなど)

やはり治っていくには、家族以外の人とも関わっていくのは重要です。患者さんや家族の置かれた状況によって違いますので、それぞれに合ったやり方を模索していただければと思います。幸い、現在は障害者総合支援法の整備に伴い、グループホーム、就労支援施設、障害者雇用、デイケアなど患者さんに応じた施設も選べます。精神病の改善に合わせ、利用している施設を順ぐりに卒業して、少しづつ自立度を高めるのもいいと思います。

“悪役になる”という選択肢とその意味

くどいようですが家族対応は完全に自己責任になりますが、特に「家族が悪役になる」方法は結果がどうなるか分かりません。

もし、家族が誘っても、引きこもりの状態が続くようでしたらどうすればいいでしょうか? 長い期間引きこもって、状況が動かないのは良くないと思うので、何かしらの変化を作ると思います。 

とりあえず外に連れ出します。1回だけ連れ出せば、いいというわけではないので、グループホームや援護寮等などの施設に入れて、家から出します。抵抗するでしょうが、試行錯誤しながらやると思います。最悪自分の家を引き払って、子供とは一緒に暮らせない状況を作り出してでもやると思います。

自分が悪役になって出て行ってもらい、後は偶然にお会いできた方と一緒に協力して生きてくれることを願いながら、世間様にサポート役をお任せします。もちろん目立たないように支援はします。

それ以外には、無責任な空想になりますが、まったく言葉の通じない国に行って2人でサバイバル生活をするとか、山奥に行ってテント生活をしながら自給自足生活するとかもいいかもしれません。やはり、患者さんが家族に必要とされ、一緒に協力していかないと生きていけない環境を作るのがいいんじゃないかと思います。

患者が自ら良くなりたいと思う力を信じて

後は、本人がどこまで良くなりたいと思っているかだと思います。

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