うつ病の治療|“存在の拠り所”の見直す心の整え方

治療

もし読んでいなければこちらから読んでいただけると、理解しやすいと思います。
うつ病の本質とは何か?診断・症状を「存在の危機」から読み解く精神科医の視点
うつ病の原因に妄想?依存?|”うつ”と妄想や依存症との意外な関係

治療の第一歩は「存在の拠り所」の確認

うつ病の治療はまず、自分が何を存在の拠り所としているかを、見つめ直すのがとよいと思います。拠り所が分かりにくいこともありますが、分かった方が気持ちの整理がつきやすいと思います。

妄想や依存に頼らず “うつ” を受け入れる心構え

前のブログのうつ病と誇大妄想で紹介したAさんですが、彼も投薬なしで改善しました。もしかしたら再度妄想を作れるようになって良くなったのかもしれませんが、理想としては拠り所(Aさんの場合は誇大妄想)なしでもやっていけるメンタルになることです。

誇大妄想に逃げず、自責・他責などの妄想に流されず、ジタバタせず、“うつ”のまま過ごしていれば、いずれ “うつ”に慣れてくる・肝がすわってくるなどして、良くなります。

(他人の評価を気にしてたけど)吹っ切れた。
(子供が巣立つことを)受け入れた。
(命を失うことも)覚悟した。
こういった感じになるのだと思います。

不安も”うつ”に近い症状なので、いじくり回さず不安をそのままにしておけば、いずれ消えていきます。実際は話し合いや周囲との調整が必要になることもありますが、心の持ち様としては、良くなるタイミングが来るまで、焦らないことが大切です。

軽い”うつ”であれば、比較的短い時間経過で良くなります。患者さんがクリニックに予約して、1か月後の受診時には良くなっていることもしばしばあります。
“うつ”とは、一般的に使われているうつ病と区別して、うつ病の中核症状という意味で使っています。)

重度のうつの場合

しかし重い”うつ” の場合は、妄想、気分の落ち込み、だるさ、神経症的な症状、思考抑制が出てきて、治療に時間がかかることもあります。原因も複雑だったり、複数あったり、また自分の問題だけでなく相手に問題がある場合もありますので、時間をかけて解決する必要も出てきます。

依存対象(存在の拠り所)に頼らないの意味

あと細かいことですが、依存しないということと、依存しているもの(存在の拠り所)を実際に捨てることは同じではありません。大事なのは心の中であってもなくてもいいやと思えることで、実際には捨てることになるかもしれないし、捨てないかもしれません。捨てても未練が残っていれば依存していることと変わりありません。もちろん、アルコールやドラッグなどの依存症の場合は、依存対象を捨てるのが望ましいです。

また、依存対象(存在の拠り所)を手放すことは、逃げることとは違います。ここは丁寧に見極める必要があります。たとえば、仕事で嫌なことがあっても、すぐに仕事を辞めたり休んだりすることではありません。もし職場での評価が気になっての”うつ”でしたら、他者評価への依存を捨てて仕事を続けた方がいいと思います。

ノルマ達成できないと仕事人としての存在意義がないと考えていて、それで”うつ”になっているのだとしたら、ノルマ達成を自分の存在意義にしないことです。会社では、一応目標は作るものと思いますが、目標は崩れるためにあると考えて、ノルマを気にしないことです。もちろん、”心のうち”を会社に言う必要はありません。

以前、諏訪中央病院の鎌田實先生の言葉で「がんばらないけど、あきらめない」というフレーズがありましたが、これに似たような心境だと思います。今まで一生懸命に頑張ってきて”うつ”になってしまった、もうがんばれない。頑張れない中で、気持ちの上で向き合い方を変えて、逃げないで継続する、大変な道ではありますが、これが回復への道だと思います。

依存は当面ゼロでなくてもよい、拠り所の分散は次善策

”うつ”の治療では、固執しない・依存しないというのが目標ではありますが、しかしながら人は弱いものですので、まったく拠り所なしというのは厳しすぎるかもしれません。次善策として依存の対象を複数持って、存在の拠り所を分散させるのもいいかもしれません。

“うつ”の治療については、また後で説明します。